コモディティ価格や株高、そして食肉など多くの商品が値上がりしています。

その全体的な要因と、個別の要因を考察して将来の見通しを考えたいと思います。

 全体的には2021年上旬から始まっています。

1章:物価を上げる要因と見通し
➀米国を始めとする金融緩和政策/②主要国の経済回復(ワクチン拡大の需要回復)/③サプライチェーンの乱れ/④スーパーサイクル/⑤環境配慮起因の需要増加

2章:商品別物価の上昇傾向と見通し
 ➀株高/②ベースメタル/③木材/④食肉⑤鶏肉および鶏卵

1章:物価を上げる要因と見通し

 全体的な要因を考えます。

➀米国を始めとする金融緩和政策

 新型コロナウイルスにより経済が落ち込む中で、多くの国は金融緩和政策によって、市場に多くのお金を流通させ、コロナ禍から立ち直ると共に経済回復をする後押しをすることを目論みました。

代表的な例として、2020.9.16 FRB(米連邦準備制度理事会)が2023年まで利上げを行わない見通しを示しました(※1)。

これによって投資される金額が増えた(金融緩和による「カネ余り」がマーケットを押し上げている)と事が一つの要因になります。

2021.3月家計への米国は現金給付を行っていて、

また2020.8月に物価よりも雇用を重要視し、従来の目標値とされた「2%」のインフレ率を「一時的に」上回ることを容認する事を決めたため、商品への投機が容認されていることに繋がり物価の上昇につながると考えているようです※5。ただし、2021.7.9には目標値を大幅に超えた場合スタンスを変える必要があるが、今は目標値に落ち着く見込みとしています。※6

一方中国では、景気刺激策の行き過ぎにより、資産バブル問題、不良債権が再燃しており、金融当局も緩和姿勢を修正せざるをえなくなっているようです※5。

 これは2021年から始めっている傾向のようで、中国政府は経済成長率より管理強化に移ったと考えられています。※5

②主要国の経済回復(ワクチン拡大の需要回復)

 そして、2021年の5月までには主要国の経済が相次いで回復し始めたため、需要が高まり物価を上げる要因になっているようです。欧州や中国が急回復をしている中、米国経済が顕著に回復の兆しを見せ始めているようです※4。

 経済回復は需要の拡大につながるため、これが物価を上げる要因にもなっています。

 主要国はワクチンの普及が大きいようですが、長期のロックダウンが解除された国も急回復しています(シンガポール)。

 また世界的なベントアップディマンド(景気後退時に抑制されていた需要が一気に盛り上げること)への期待が商品市場全体の需要を逼迫させているようです※5。

 経済成長にともなって資源価格が上がっているのは、2020年春から夏に経済活動がストップした時期に底打ちし、急速に価格水準を切り上げてきたところからそのような傾向が読むことができます。※11

③サプライチェーンの乱れ

 さらに、商品が少ないという想いや、今後増えていくであろうという見通しから需要を拡大させている要因もあるようです。

 市場にお金が溢れているという要因以外にも、新型コロナウイルスのパンデミックによりサプライチェーンの混乱と、一部の原材料在庫減少が火に油を注いだと指摘されます※4。

④スーパーサイクル

 また需要が供給を上回り、価格が長期に渡って高止まりする状態(スーパーサイクル)の指導を予見する人が増えたため、投資家を引きつけているようです※4。

 ただし、スーパーサイクルか上昇局面か、人によって意見が分かれているのも現状です。

 今回もし「スーパーサイクル」であれば「第五次」で、「第四次」は1990年代後半から2008年になります。

 「スーパーサイクル」によると原材料・エネルギー価格(コモディティ価格)の上昇はコストプッシュ・インフレ要因であり、インフレの先行指標として考えるようです※5。

 またこの一年間でコモディティ価格は倍になったが、今の水準は2008年の高値に比べると半値以下にすぎず、今後の上昇の余地は大きいとも考えれるようです※5。

⑤環境配慮起因の需要増加

 環境配慮(脱炭素)によるエネルギーの確保のためにトウモロコシやパナジウムなどが必要とされているようです。

2章:商品別物価の上昇傾向と見通し

 個別の検討をします。

➀株高

2021.2 30年分ぶりに3万円代に達しました(※1)。30年ぶりの高値のようです。

 →現在まで株高上昇は続いています。

【要因】としましては、

2020.9.16 FRBが2023年まで利上げを行わない見通しを示しました(※1)。

 →これが株高を上昇が続くことを確信できる根拠となっているようです。

 これは、お金の流通量を増やすことによってコロナから回復した際の好景気を期待したもので、お金の流通量が増えることが株高の購入にも繋がっているようです。

 更に、この景気回復は以降長い期間起こる現象であり「第五次スーパーサイクル(定期的に訪れる価格の波ではなく、不定期で発生する数十年かけた大規模な価格の上昇と下落※2)」に入ったという期待があり、これが投資意欲に繋がっているようです。

 また2020年春からの新型コロナウイルスにより在宅の機会が増え、各家庭にお金が余っている状況が生じ、このお金が投資資金に繋がっているようです。

 これは各国政府ならびに中央銀行が史上空前の資金供給を続けているも、コロナ不況によって経済の現場に資金を使える範囲が限られているため、働き場のないお金が株式市場などへ流れ込んでいるようです※3。これが原因だとすると次第に経済の現場に資金が使われるようになると収束すると考えられます。

 全体的なお金の流通とコロナ後の経済回復によって全体的にインフレとともに好景気になるとは思いますが、株高から経済市場への融資の変更ということによって、景気とは別に株高バブルは一旦崩壊する可能性があります。

②ベースメタル

 銅や鉄などのベースメタルについては、主として中国の需要急増が原因のようです。中国政府はコロナショックに対応した景気刺激策のため、昨年春以降、インフラ投資を加速させたようです。※5

③木材

 ウッドショックという状況が起こっています。

 引き金はアメリカの木材需要増によるもののようです。※10

 アメリカにおいてはテレワークや金融緩和政策に基づくカネあまりから住宅着工数が増えたことに要因があるようです。

 さらにコロナによる巣ごもりから世界的なDIY需要の高まりも影響するようです(ただし2021.4月にはDIY需要は落ち着いてきています)。

 供給側にとっては、2020.9月の北米西海岸の森林火災や、工場稼働率低下による製材品不足、またコロナ需要減を見越した出材減が原因であったようです。

また中国への輸出の増大も大きな影響を与えています。

 中国における木材需要は、住宅向けではなく、工業製品の輸送に使用する梱包用パレットなど、産業向けが主で、いち早くコロナ禍から脱し経済が回復し、木材を買い集める動きに拍車がかかっているようです。※10

 ウッドショックは上記の理由によるものなら、長期的なものではないように考えられます。

④食肉

 2021.3月第三週に卸価格は一か月前に比べ2割以上も上昇しました。※11

 2021.3.18にアメリカ政府が30日間関税引き上げによる緊急輸入制限を発動しました。※11(日米貿易協定による制限から。2020.1月に協定は発効していて当時はUS牛安などが始まっていたようです。)

ⅰ.国内の焼肉ブームによる牛肉の需要拡大

 2020年「焼肉店」の倒産件数は全国で14件。前年比で33.3%減で、過去10年間でみると最少となったようです。

要因として無煙ロースターなどの排煙装置による“換気”や、自分自身で目の前で焼くなどが、コロナ禍で注目さているようです。「無煙ロースター」や「上引きフード」は「約三分半で客席全体の空気を入れ替えることができるようです。※7

 またコロナによって郊外に外食需要がシフトしたため、郊外にある焼肉店が支持を得た部分もあるようです。※7

 ワタミは2020.10月に関東で「焼肉の和民」の一号店をオープンしています。

 商品を届ける「特急レーン」や配膳ロボットを導入する事で省人化を実現し、質の高い牛肉をリーズナブルな価格で届けることを目的にしているようです。また和民は、アフターコロナにおいても居酒屋市場は7割に縮小すると予測しており、新たな基幹事業と考えているようです。また「焼肉の和民」は居酒屋業態に比べ早い時間の利用が増えているようです。※15

ⅱ.アメリカの食肉供給体制の変化

【雇用者の状況】

2020.4月に米国で食肉処理工場で全従業員の約3%にあたる4913名が新型コロナウイルスに感染し、20名が死亡しました。工場内は密閉された空間でソーシャルディスタンスを確保しづらく、常時室温が低いことや、多くの労働者が寮で集団生活をしていることが原因のようです。※8

 この影響によってソーシャルディスタンスをとった工場の稼働などで大幅遅れがでています。

また失業保険の手厚い保護によって2021.5月の時点では4分の1の受給者が働くより得する状況が生じていて、求人に対して雇用が増えていかないことも原因のようです※9。

【穀物高】

 豚などの飼料となる中国の大豆需要が加速したためと、穀物は水や土地の利用制約などから、世界的に生産量が限界に近付いていることが要因のようです。※11

 穀物高による利益悪化に伴い、利益確保に製品価格を引き上げることや、家畜の頭数を削減することを行っているようです。牛肉の価格の上昇は一番家畜の頭数の削減が影響する傾向があり、さらにそれはタイムラグがあって発生するようです※16。

ⅲ中国などの経済の成長

 中国や韓国で需要が伸び、円安も相まって価格を押し上げています。※11

 もともと中国の牛肉輸入量は、この10年で20倍以上に増えていました。※14

 2019.9月のASF(アフリカ豚熱)が中国で猛威を振るい、中国の養豚産業に壊滅的な打撃を与えた事との、その回復のために小麦など需要が増大しているようです。※16

ⅳオージービーフの低迷

 干ばつの影響(2019.1~9位)で豪州産牛肉が飼育を制限していたため、米国産牛肉輸入が急増したともいえます。※11

 今後の見通しとしてましては、主要牛肉産地から他の国への輸入量が増える可能性も考えられます。

 2019年の統計ではオーストラリア産・アメリカン産がほとんどをしめ、TPPからカナダ産などが増え、ニュージーランドが続き、2019年からウルグアイやアルゼンチンなどの解禁とシェアが外食を中心に増えています。ウルグアイは牧草で肥育しているところが特徴です。※12

⑤鶏肉および鶏卵

 2021.6月には鶏卵が値上がりしています。

 また鶏肉も徐々に値上がりしています。

 鶏肉は他の食肉に比べ国産比率が高い傾向にあります。農林水産省によると2018年の鶏肉自給率は64%、牛肉が36%、豚肉が48%。

しかも家庭の消費は国産がほとんどで、2020年春以降、外食自粛で家庭料理を作る機会が増え、国産鶏肉の人気が高まり価格がじわじわ上がっている傾向にあるようです(2021.1月)※13

 また2020.11月国内で3年ぶりに鳥インフルエンザ(香川県で高病原性鳥インフルエンザ発生など)が発生していることも値上がりに拍車をかけています(2013.3月までに18県の52の養鶏場などで相次ぎ殺処分が行われ、採卵鳥をひなから育てて生み始めるためには150日ほどかかることから※17)。

 さらに2020年には唐揚げ専門店が好調(テイクアウトが主流で低予算でできるため)で、居酒屋なども業態変更していることで鶏肉ニーズが増えていることも影響するようです。※13

 牛肉も鶏肉も国内需要による増加は、日本における肉需要の増加の限界に影響されるのではないかと思います。

■参照■

※1… https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2021/023748.html

※2… https://media.rakuten-sec.net/articles/-/31043?page=3

※3… 『大暴落』澤上篤人、明日香出版社、2021.6.16

※4…『日経ビジネス』2021.5.17号「商品価格軒並高騰の意味」より

※5… https://shikiho.jp/news/0/427778

※6… https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-07-09/QVZGR2T0G1KX01

※7… https://www.fnn.jp/articles/-/135187?display=full/

※8… https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/06/post-93794.php

※9… https://www.businessinsider.jp/post-235273

※10… 『Housing Tribune』vol.622 2021.7.9No2

※11… https://mainichi.jp/premier/business/articles/20210407/biz/00m/070/001000d

※12… https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45599850T00C19A6QM8000/

※13… https://style.nikkei.com/article/DGXMZO68075500S1A110C2000000

※14… https://news.yahoo.co.jp/articles/15106b4bdd29cfee4960c060393ddce123fcf31b

※15… https://shokuhin.net/39010/2020/12/28/ryutu/gaishoku/

※16… https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210309/mcb2103091118014-n1.htm

※17… https://news.yahoo.co.jp/articles/69fdc8566c33090c20bf851beffda831213254d6

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